2011-07-05

アレロックによる劇症肝炎死亡例

本日は木曜日ではありませんが、患者さんに対して一刻も早く伝えたい事項ですので、臨時に書きます。6月30日に既にメディアで報道されたため、今週来院される多くの患者さんよりアレロックの安全性について質問が寄せられました。アレロックは皮膚の痒みを強力に抑制しますので、眠気の副作用があるものの、私は好んで処方しておりました。経験的には眠気以外には重篤な副作用は経験したことがありませんでした。そこへこのたびの報道で、正直、寝耳に水の印象です。厚労省に指導により添付文書の一部が以下のごとく改定されました。
《使用上の注意》
劇症肝炎,肝機能障害,黄疸:劇症肝炎,AST(GOT),ALT(GPT),γ-GTP,LDH,Al-P
の上昇等を伴う肝機能障害,黄疸があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
〈参  考〉 直近約3年間(平成20年4月1日~平成23年3月4日)の副作用報告(因果関係が否定できないもの)の件数・劇症肝炎:2例(死亡)
死亡例の経過の概要です。
1 男90代
アレロック投与開始6日目頃 黄疸が出現。投与13日目 本剤中止。
中止1日後 入院。総ビリルビン14.6mg/dL,AST(GOT)640IU/L,ALT(GPT)1055IU/L。中止3日後 肝障害は劇症化し,腎機能障害,播種性血管内凝固症候群を伴った。
中止4日後 意識障害を認め,意思疎通不能となった。
中止6日後 死亡。
DLST:本剤陰性
併用薬:エピナスチン塩酸塩,消炎・鎮痛・鎮痒薬,ニフェジピン,ロペラミド塩酸塩
2 女40代
不妊治療中にてノルゲストレル・エチニルエストラジオールを服用。
アレロック投与200日目 全身倦怠感,尿の黄染を自覚。前日まででノルゲストレル・エチニルエストラジオールを中止。投与208日目 本剤中止。
中止1日後 黄疸, 総ビリルビン13.2mg/dL,AST(GOT)123IU/L,ALT(GPT)140IU/L,プロトロンビン活性(PT)21%を認め,入院。腹部CT上,肝の形態は正常範囲内で,閉塞性黄疸は認められなかった。
中止4日後 プレドニゾロン40mgを投与開始。
中止5日後 ステロイドパルスを実施(3日間)。
中止6日後 ICUへ入室し,血漿交換(合計10日間)及び持続的血液透析濾過(CHDF)を開始。
中止7日後 ほぼ無尿となり,意識障害(Ⅱ~Ⅲ度)を認め,気管内挿管にて人工呼吸管理等の全身管理を行った。腹部CT上,肝の委縮傾向と腹水の増加を認め,脳波では全体的な活動性の低下を認めた。血漿交換施行中もPTは30 ~ 40%で,黄疸も進行。
中止25日後 全身性痙攣を認め全身状態の悪化が進行。
中止29日後 死亡。
DLST:本剤陽性(S.I.値 519%),ノルゲストレル・エチニルエストラジオール陽性(S.I.値 326%)

以上が公開されている内容です。1例目は投与開始6日目、2例目は投与開始半年以上してからの発症で、併用薬もDLST陽性です。今回の改定後の添付文書でも「観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。」との常識的な注意喚起に留まり、定期的な血液検査の義務付けまではしておりません。なので、あくまで患者さん側からの黄疸や全身倦怠感などの体調不良などの訴えがなければ、医師側も血液検査をすることはありません。薬剤内服中の患者さんは、体調の変化があれば、速やかに投与された医師に相談されるべきと考えます。メーカー側によるとアレロックは年間約443万8000人が服用しており、他の薬剤と比較して死亡例の頻度はむしろ少ない方です。私は今回の死亡例を理由にアレロックの処方件数を減らそうとは思いませんが、医療側は患者さん側に情報提供する義務があると考えます。医師側は投与前に副作用を予見することは不可能ですが、「クスリはリスク」との認識を啓蒙する必要はあります。
それにしても、このたびの件で医療現場で困惑と混乱があるにもかかわらず、メーカーのMRは当院にまったく姿を見せません。販売促進のための訪問は不要で、むしろ重篤な副作用報告があったときこそ、営業の本領が発揮できる時だと考えますが、残念です。ほとぼりが冷めた頃訪問されても、夏の最繁忙期に差し掛かり、説明を聞くヒマがなさそうです。(担当MRはこのブログを見ていないでしょう。)

2 件のコメント:

  1. 手賀沼の夕日です2011年7月6日 18:54

    むずかしい内容でした。わかったことは、薬を使うときには、健康状態やほかの治療によって何が起こるかわからないから、おかしいと感じたら(感じられればいいですが)先生に遠慮せずに伝えるということでしょうか。
    情報を公開してくださって、大変ありがたく思います。
    医薬情報を伝えるべき営業担当の人が、訪問もしないばかりか、(顧客の)ブログも読まないとは、ややびっくりでした。

    返信削除
  2. 標題はアレロックの関与が疑われた劇症肝炎死亡例の方が正確なのではないかと思いました。詳細がわかりたいへん参考になりました。

    返信削除